【Vol.178】ステルスビジネスのすすめ

  ステルス戦闘機というのは、敵のレーダーには映らないのだそうです。同じように、ステルスビジネスというのもあると思うのですが、如何でしょうか。
 地元の人でさえ、その会社が何をやっているのかよくわからないのに、高収益をあげている会社に出会うことがあります。
 高収益であることはその会社の構えや空気で分かります。長年の勘でしょうか、嗅覚みたいなものです。周辺の人にとってその会社は、特に興味をひくようなものではないかもしれませんが、私にとっては興味津々、何をしているのだろう、どうして収益を上げているのだろうと、無性に知りたくなるのです。

 地元の人に尋ねると、大まかに「○○をしてるらしい」くらいのお話で、詳細は分かりません。それどころか、「全然、何をやっているのか分かりません」という会社もあります。
 その人にとって、別に調べる必要も無いのでしょうが、調べないということは、その人にとって全く関係がないのか、逆に、実は関係があるにもかかわらず、その会社があえて関係がないと思わせているのか、そのどちらかです。
 会社側の意図で関係がないように思わせているのなら、これってステルスではないでしょうか。考えてみると、利害が対立したりしなかったりするのは、いずれも相手という存在があるからで、その相手が見えないと、利害が対立するのかしないのか、それを考えること自体がありません。つまり、利害や競争の対象が見えないステルス状態なのです。

 ビジネスの世界にもステルス会社は案外多いものです。例えば、携帯電話の通話料を払わずに通話できなくなった利用者が、コンビニなどで支払うと同時に、支払い情報をキャリア(電気通信事業者)に通報し、速やかに通話再開を促すことだけをしている会社。1回ごとに、その利用者が支払うお金から100円貰うのですが、それだけで年間80億円。同業者はいません。誰にも見えないところですごいビジネスをしているのです。
 また、企業グループの転勤や異動の際に生ずる、住宅の手当てや不動産手続き、ガス・水道・電気料金等々、様々な清算・支払いなどを当事者に代わってやってあげる会社があります。グループ企業全部で数万人の社員がいますし、他社グループまで展開していますから、年間10億円近くを売り上げています。これも見えにくい会社です。
 或いは、菓子製造会社なのに自社ブランドを持たず、全量OEM(供給先ブランド名で売る商品の受託生産)の会社。工場には何の表示も無く、何を生産しているのかも分かりません。主な顧客は全国の有名菓子メーカーで、年間160億円ですって。更に、消費者金融事業者に顧客の与信情報を配信する会社。この会社は売り上げを公表していませんが、年間数100億円だそうです。
 いずれの会社も宣伝はしませんし、PRもしていません。あえて見えないようにしているのです。
 見えてしまった途端、多くの会社が真似をして、結果、熾烈な競争が起こるのは明白です。ステルス戦闘機が見えないのは、隠れているからではありません。レーダーに捉えられてしまうのは電波を反射しているからで、電波を反射しなければ見えないのです。
 如何でしょうか、ステルスビジネス。見えないことは強いのです。

えっ、SIもステルスビジネスかって?違いますよ~、うちはご存知のとおり零戦です!