先用後利(せんようこうり)という言葉があります。越中富山の置き薬といえば、どこの家にもあった家庭用常備薬ですが、そのビジネスモデルを端的に表現した言葉です。現代になって誰かが言ったのではなく、1600年代に藩主前田正甫(まさとし)公が言われたそうです。全国津々浦々の家々に、無料で配置する薬の売り方を、端的に一言で表現したものと伝えられています。まさに、見事な表現です。先に用いて後で利する。先ずは服用してください、そして(使った分だけ)後でお金を頂きます、という素晴らしい仕組みです。
この先用後利という言葉を、私はビジネス・プロデューサー養成講座では必ずお話しますので、受講生の皆さんは全員が知っています。それは、現代のビジネスにも通じる、バイブル的なビジネスモデルとして、私は勿論、多くのクライアントや受講生OBが活用している教えでもあるのです。
しかし、最近になって先用後利とは逆のビジネスがあるのを知りました。
何でも、アメリカには信用力の低い人向けの住宅ローン(サブプライムローン)があるそうで、はじめは低金利なのに、その期間が終わって通常金利(信用力が低い分高金利)になると、ズシリと返済負担が重くなり、ローンの返済が滞る人が急増し、破綻状態になっているそうな。で、その住宅ローンを担保にしていた証券が格下げになり、金融市場の信用収縮を引き起こしているというのです。
金融市場では、このサブプライムローンを証券化(債務担保証券)して運用していた証券会社や金融機関が、その目減り分を早めに処理する為に売り急ぎ、かえって悪循環に陥っていく…。更に、格付けや与信が厳格になると投資先を探している資金の行き着く先が狭められ、バブル(投資に対するリターンが大きいという意味)を作らざるを得なくなり、それに連られて、一見何の関係もない様々な原料や農作物の先物市場が高騰する。
つまり、サブプライムローンから始まる金融不安が、世界中を駆け回っているというのです。
この話、先にお金にする「先利後用(せんりこうよう)」ではないのでしょうか。
紛らわしくもありますが、先用後利の逆なのです。
前田正甫公は、先ずはお薬を使ってもらい、役に立ったら後でお金を頂きなさいと言ったのに、その逆に、先にお金にしてしまい、更にそのお金を先物市場に投資して、そのまた先の市場に投資する。現実や現物は後回し、最初の見かけ利益に投資して、その見かけの利益をまたその先に投資した挙句、後になって具合の悪い出来事が追っ掛けて来て追い越した…。そういうことだと思うのですが、皆さん、如何でしょうか。
もうお気付きでしょうが、このビジネスは「顧客の利益」を考えていないのです。もっとも大切にしなければいけないお客様を無視したマネーゲーム、お金が突っ走っているだけなんです。
こんな話、一体いつからでしょうか。私だって、オイルマネーというお金がい~っぱいあるのは知っています。でも、彼らは既に十分儲けているのに、どうして、もっともっと、先に儲けてしまおうとするのでしょうか、不思議でなりません。
きっと、汗を流して稼いだお金ではない、投資の為のお金だからです。
さあ皆さん、経済学者や投資会社が何と言おうが、先利後用に乗ってはいけません。
私たちは、今までもこれからも、お客様第一、ずう~っと先用後利でいきませう。